リバプールはなぜ遅れを取った?背景にある“マネ以上に痛恨だった放出”

【引用:BeSoccer公式Twitter & Off The Ball編集部】

リバプールが、開幕からのスタートダッシュに失敗している。優勝候補の筆頭と評されながらも、早くもライバルから遅れを取る格好となったが、リバプールはなぜ開幕から躓くことになったのか?そこには、偶然ではない綻びが今夏のオフシーズンの時点で見受けられていた。本記事では、リバプールが出遅れることになった要因について、独自の視点でまとめている。その背景には「マネ以上に痛かった放出」がある。

text by Jofuku Tatsuya

目次

開幕から思わぬ躓きを見せたリバプール

2021-22シーズンは前人未到の4冠を射程圏に捉える快進撃を見せたものの、最終的にはリーグ杯とFA杯のみの優勝に留まった。2022-23シーズンこそ、主要大会であるプレミアリーグとUEFAチャンピオンズリーグの奪還が目標となる。しかし、コミュニティー・シールドではマンチェスター・シティを撃破したものの、プレミアリーグの開幕戦では昇格組のフラムに2-2のドロー、第2節では要塞アンフィールドで1-1のドローと、思わぬ出だしを余儀なくされた。

問題なのは、結果だけではない。フラム相手には激しいプレッシングとカウンターで劣勢を強いられ、クリスタル・パレス戦もホームであっさり崩され先制点を奪われる展開に。負傷者が続出していることが最大の痛手となっているが、明らかにチーム作りが万全でない状態で開幕を迎えている。

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マンCとの優勝争いにリバプールは早くも窮地

「まだ2試合じゃないか!」という意見ももちろんあることと思う。しかし、近年のプレミアリーグにおけるリバプールとマンチェスター・シティの優勝争いを振り返っていただきたい。2019-2020シーズンは、シティが勝ち点「98」だったのに対し、リバプールは勝ち点「97」。2021-22シーズンは、シティが勝ち点「93」だったのに対し、リバプールは勝ち点「92」。本来90ポイント代であれば、他リーグであれば問題なく優勝できるが、プレミアリーグではそうはいかない。リバプールの前には、常に勝ち点「1」差でシティが立ちはだかってきた。

シティはウェストハム戦で2-0、ボーンマス戦では4-0と、開幕から手堅く連勝を飾っており、リバプールは2試合目にして早くも勝ち点「4」差を離されてしまった。これは、シーズン全体で鑑みると、痛恨の極みと言える状況だ。リバプールは開幕2週間の時点で、これ以上の勝ち点の取りこぼしを許されない状況まで追い込まれてしまうことになった。

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リバプール低調スタートの兆候はプレシーズン中にも…

ではなぜ、リバプールは低調なスタートを切ることになったのか?その兆候は、開幕前のプレシーズンの時点で見受けられていた。大黒柱のセネガル代表FWサディオ・マネの退団が決定したことで、リバプールは即座にベンフィカからウルグアイ代表FWダルウィン・ヌニェスを後釜として獲得。この動き自体は非常に迅速で、的確な補強となった。

その後はMFファビオ・カルバーリョ、DFカルヴァン・ラムゼイと19歳の若手2人を獲得し、世代交代を見据えた“未来投資”にも着手。そこまでは良かったが、それ以降、リバプールはぱったり補強を止めてしまった。ライバルのシティや、トッテナム、アーセナル、チェルシーは積極的な大型補強で即戦力を確保したのに対し、リバプールは静かな夏を過ごすことになった。

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懸念点はコンディションが復調しない得点源ジョタ

リバプールに補強の必要性がなかったのかと言うと、決してそんなことはない。得点源のポルトガル代表FWディオゴ・ジョタがプレシーズン中にハムストリングの負傷で早々に戦線離脱。キャンプでの調整期間を丸々棒に振ることになった。ジョタに関しては、昨季15ゴールを決める活躍を披露したが、終盤戦の10試合ほどは目に見えた失速を見せ、復調しないままシーズンを終えていた。そこに加えて、プレシーズンでの長期離脱。ジョタが新シーズンで活躍できる保証は確約できない状況にあった。

さらに、イングランド代表MFアレックス・オックスレイド=チェンバレンを含め、プレシーズン中に負傷者が続出する事態となった。移籍期間中なので、補填するために動くことが可能だったが、リバプールが動くことはなかった。しかし、ジョタの活躍の不確定要素、負傷者の状況を踏まえると、少なからずあと1人は即戦力の獲得に乗り出すべきだったはずだ。

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“穴埋め”するも“上積み”はしなかったリバプール陣営

リバプールは、マネと日本代表MF南野拓実を完全移籍で売却し、ベルギー代表FWディボック・オリギをフリートランスファーで放出。アタッカー陣が相次いでチームを去ることになった。ヌニェスの獲得は確かに“穴埋め”にはなったが、戦力が“上積み”となったわけではない。ましてや、マネが託されていたタスクは「9番」と「偽9番」の役割を同時にこなす並外れたもので、プレースタイルも異なるヌニェスにいきなり同様の活躍を期待するのは、あまりに酷すぎる。

ライバルの中ではとりわけ、トッテナムが主力の退団を回避しつつ、主力級の選手を立て続けに補強。まさしく“上積み”に成功し、チームとしてレベルアップした上でシーズンに臨んでいる。それに対しリバプールは“穴埋め”のみで、“上積み”のないまま、レベルアップとは到底言えない状態で、開幕を迎えることになった。

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リバプールの長年の課題は“インサイドハーフの得点力”

また、リバプールは兼ねてから中盤の得点力が大きな課題に挙げられている。シティのインサイドハーフと比較しても、その差は歴然だ。

  • ジョーダン・ヘンダーソン…2ゴール/35試合出場
  • チアゴ・アルカンタラ…1ゴール/25試合出場
  • ナビ・ケイタ…3ゴール/23試合出場
  • カーティス・ジョーンズ…1ゴール/15試合出場
  • ケヴィン・デ・ブライネ…15ゴール/30試合出場
  • ベルナルド・シウバ…8ゴール/35試合出場
  • イルカイ・ギュンドアン…8ゴール/27試合出場
  • フィル・フォーデン…9ゴール/28試合出場

上記は、リバプールとシティのインサイドハーフに関する、昨季のプレミアリーグの成績だ。フォーデンは前線との兼任ではあったものの、リバプールは合計7ゴールなのに対し、シティは合計40ゴール。リバプールにとって中盤の得点力の課題解決が、チームのさらなる強化に直結し、優勝に向けた最大の特効薬になるのは一目瞭然だった。

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負傷者多数のリバプールが移籍市場で後手に回った要因

しかし、リバプールが中盤の即戦力の補強に乗り出すことはなかった。ユルゲン・クロップ監督が現状のスカッドに満足しているとコメントを残しているが、この発言は在籍選手のモチベーションを維持するマネジメントの一環の可能性もあり、本心のところは読み取れない。しかし、少なからず数字上の成績は、シティを打ち破る上で改善の余地があるポジションであることを物語っている。

プレシーズン中に負傷者が続出した時点で、すぐさま補強に動いていれば、開幕早々の戦力不足に頭を抱えることはなかった。リバプールは、どうして今夏の移籍市場で後手に回ってしまっているのか?それは、リバプールの黄金期を築き上げた“ある人物”の退任が響いているように映る。

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リバプールの黄金期を築いた立役者マイケル・エドワーズ

マイケル・エドワーズ氏
【引用:DaveOCKOP公式Twitter】

マイケル・エドワーズ。2016年からリバプールのスポーツ・ディレクターとして活躍した男は、2022年夏にクラブを去ることになった。リバプールの14年ぶりのCL制覇、30年ぶりのプレミアリーグ優勝の偉業へと導いた「表」の立役者がクロップ監督だとすれば、「裏」の立役者は、紛れもなくエドワーズ氏だ。

  • アンドリュー・ロバートソン…約10億円/2017年加入
  • モハメド・サラー…約48億円/2017年加入
  • ドミニク・ソランケ…約4億円/2017年
  • フィルジル・ファン・ダイク…約114億円/2018年
  • ナビ・ケイタ…約78億円/2018年
  • アリソン・ベッカー…約82億円/2018年
  • ジェルダン・シャキリ…約20億円/2018年
  • ファビーニョ…約57億円/2018年
  • 南野拓実…約10億円/2020年
  • チアゴ・アルカンタラ…約31億円/2020年
  • ディオゴ・ジョタ…約61億円/2020年
  • コスタス・ツィミカス…約16億円/2020年
  • イブラヒマ・コナテ…約54億円/2020年

上記は、エドワーズ氏がSDに就任してから獲得した選手たちだ。今のリバプールを支える主力が揃っているだけに、その的確な手腕が窺える。そんな優秀なSDの退任。これは、ある意味でマネの退団より痛恨だったと言っても過言ではないだろう。

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リバプール新SDは初仕事がクラブ史上最高額の取引に

【引用:Anfield Watch公式Twitter】

エドワーズ氏の退任後は、彼の右腕だったジュリアン・ウォード氏が後任を務めている。今年1月にポルトからコロンビア代表FWルイス・ディアスの獲得に至った経緯は、エドワーズ氏のサポートの元、ウォード氏が中心となって実現させた成果だったと報じられている。ディアスは現在のチームにとって重要な戦力となっているため、ウォード氏の最初の仕事としては素晴らしいものと言えるだろう。

しかし、完全な独り立ちとなった今夏、現時点では移籍市場の動きやチーム強化へのアプローチが鈍いと言わざるを得ない。ヌニェスの獲得に関しても、争奪戦を制したことは評価されるべきことだが、移籍金は約142億円。つまり、ウォード氏は単身での初となる補強で、いきなりクラブ史上最高額を支払ってしまったことになる。ヌニェスのポテンシャルは申し分ないものの、果たして140億以上もの取引は適正価格だったのだろうか。マネの退団により、足元を見られ必要以上の巨額を払ってしまったのではないだろうか。もしもエドワーズ氏であれば、もう40億円ほどはコストを抑えて落札できていたのではないだろうか。この業界に“たられば”はご法度ではあるものの、あっさりクラブレコードを更新してしまった状況には、やや懐疑的にならざるを得ない。

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移籍市場にはリバプールに適した人材が売り出されているが…

バルセロナは現在、過剰戦力を持て余しており、オランダ代表FWメンフィス・デパイや同MFフレンキー・デ・ヨングが破格のバーゲン価格で売り出されていると報じられている。ともにファン・ダイクと代表チームで連携を高めており、デパイはウイングや最前線の両ポジションを卒なくプレーできる。また、デ・ヨングに関しても、ハードワークに加え、テクニックやクリエイティブなチャンスメイクに長けている。どちらもリバプールにとって魅力的な人材だ。

また、中盤の得点力で言えば、レスター・シティのMFジェームズ・マディソンは最適な人材と言えるだろう。昨季は12ゴール8アシストと孤軍奮闘の活躍を見せ、移籍金設定額は80億円以上と高額ではあるが、チームの課題を一発で解決してくれる適任だ。しかし、他のライバルクラブは今でも着実な補強が発表されている中で、リバプールの今後の補強が音沙汰がない状況だ。今季は優勝争いに参加するライバルが増えることも予想されており、さらにカタールW杯が控える中、過酷で消耗の激しいシーズンが予想されており、現状のスカッドでは正直、危機感を抱かずにはいられない。

リバプールがスタートダッシュに失敗した背景のまとめ

2022-23シーズンは開幕から2戦連続でドローと、スタートダッシュに失敗したリバプール。大黒柱のマネがチームを去り、後任としてヌニェスを獲得したリバプールだが、戦力の“穴埋め”のみに留まり、“上積み”させる補強を投じることはなく、積極的に大型補強を進めたライバル勢に遅れを取っている。プレシーズン中に負傷者が相次ぐも、移籍市場で後手を踏んでしまった背景には、敏腕SDであるエドワーズ氏の退任が大きく影響している可能性もある。野戦病院化しているチーム状況、依然として解決されていない中盤の得点力不足の課題。リバプールは明らかに“準備不足”の状態で開幕を迎えてしまっており、早くも優勝争いから脱落する危機に直面している。移籍市場はまだ数週間残されているが、クラブは改善策として補強に動くのだろうか。新SDを担うウォード氏の挽回に期待したい。

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この記事を書いた人

「Off The Ball」編集長。
大手サッカー専門メディアに過去6年配属。
在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。
「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。
人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。
趣味はサウナ。

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