【プレミアリーグ2022-23】“ワーストイレブン”を選出 最もガッカリな選手は…

プレミアリーグ22-23のワーストイレブン
【引用:England / LiveScore / WhoScored.com / GOAL 公式Twitter & Off The Ball編集部】

2022-23シーズンのプレミアリーグは、伏兵ニューカッスルのトップ4入りに加え、ブライトン、アストン・ビラ、ブレントフォードといった中堅組が目覚ましい飛躍を見せ、所属選手も期待を大きく上回るパフォーマンスを披露した。
一方で、開幕前は高い下馬評が寄せられながらも、それに見合った活躍を示すことができず、期待を大きく裏切った選手もいる。
今回の記事では、今季に主役級の活躍が期待されながらも、その期待を失望に変えてしまった選手をピックアップ。“ワーストイレブン”として11名を選出し、紹介していく。

text by Tate Masa

目次

プレミアリーグ2022-23の“ワーストイレブン”

前回のサプライズイレブンと同様に、ポジションごとにワースト選手を選出し、フォーメーションを組んでいく。今回のワーストイレブンにおいても、システムは3-2-4-1を組み、サプライズイレブンと同じ形とする。

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GK・DF部門

GKジョーダン・ピックフォード(エバートン)

イングランド代表の正GKがプレミアリーグ17位のGKで良いのか?答えはNOだ。エバートンが今シーズン、0失点で終えた試合は38試合中9試合だったが、そのうち1試合はピックフォードは怪我により出場していなかったので、ピックフォードがクリーンシートを達成したのは37試合中8試合のみだった。ちなみにアーセナルのイングランド代表GKアーロン・ラムズデールは38試合中14試合でクリーンシートを達成している。もちろん、チーム全体の質の違いはあるが、このデータだけで見るとイングランド代表の正GKにどちらを選べば良いのかは一目瞭然である。

ピックフォードの持ち味である高いセービング能力によって失点を防いだシーンもあったが、その失点になるかもしれないようなシチュエーションにならないようなコーチング不足や、簡単なプレーでの凡ミスもあった。何より、チームに所属する選手層を考えると、降格争いをしてはいけないチームでのここ数年の下位低迷続きは、ピックフォードも原因の一人であると言えるだろう。

DFジョー・ゴメス(リバプール)

今シーズンのジョー・ゴメスは正直あまりに酷いパフォーマンスであったと言わざるを得ない。今夏にリバプールと新契約を結び、フロントの期待を背負って契約期間を延長した。オランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイクとCBでコンビを組み、シーズン開始当初はスタメンとしての出場が多かったが、出場時は簡単なパスミスや守備時での軽い対応を露呈し、失点のきっかけに。ボールを持つだけで何かミスを引き起こす雰囲気を漂わせており、チームメートからの信頼も右肩下がりに低下していったように映った。ミスが続くと自信の無さそうな消極的なプレーも目立ち、アグレッシブなプレーを求めるユルゲン・クロップの信頼も徐々に失っていった。その結果、2023年の2月後半以降は、怪我の影響もあり出場機会はほぼ無くなった。

リバプールが本来の調子を戻し始めたのは、皮肉なことにゴメスの出場機会が無くなってからであり、4月17日のリーズ戦から5月15日のレスター戦までの7試合を7連勝した期間でのゴメスの出場は0であった。
今季、プレミアリーグから最も出来の悪かったガッカリな選手をランキング化するならば、残念ながら彼が1位となるだろう。
今季のリバプールの不調は、多くの失点で戦犯となったゴメスが元凶と言っても過言ではないほどのパフォーマンスだった。

DFエリック・ダイアー(トッテナム)

今シーズン、トッテナムはプレミアリーグを8位で終え、UEFAチャンピオンズリーグはおろか、ヨーロッパのコンペティションに来季出場することが出来ない状況まで陥った。その原因の一つにはチームの失点数の多さがあり、その原因にはCBを努めるイングランド代表エリク・ダイアーの低調なパフォーマンスもあった。

主に3バックの中央での出場が多いダイアーだが、前監督のアントニオ・コンテのサッカーにおいて、このポジションの質がチームのパフォーマンスに直結する。そんな中でトッテナムはプレミア38試合中、無失点だったのは9試合のみだった。逆に2失点以上したのは19試合と非常に多い。この失点の多さがトッテナムの乱調の原因であることは言うまでもないが、ダイアーの不振もチームのブレーキとなっていたことは言うまでもない。

DFマルク・ククレジャ(チェルシー)

2021−22シーズンにブライトンで大活躍を見せ、ブレイク選手となったスペイン代表マルク・ククレジャは大きな期待を背負って2022年夏にチェルシーへとステップアップ移籍を果たした。9月には昨シーズンまでブライトンで指揮をとっていたグレアム・ポッターがチェルシーの監督として引き抜かれたことと、同ポジションでの一番手だったイングランド代表DFベン・チルウェルが怪我をしていたこともあり、シーズン序盤は多くの出場機会を得ていた。しかし、出場試合では不安定な守備対応が続き、攻撃時でもチームに違いをもたらし、貢献することが出来ず、最終的にシーズン通して2アシストで終わってしまった。今シーズンはブライトン時代のパフォーマンスを発揮することは出来たとは言えないだろう。

チルウェルが復帰してからは出場機会が減り、また怪我によってシーズン終盤は出場が無かった。出場時間が短かったチルウェルがシーズンで3アシストしていることを考えると、今シーズンのククレジャは期待に答えられなかったワースト選手の一人であると言わざるを得ない。

MF部門

MFカルヴィン・フィリップス(マンチェスター・シティ)

2022年の夏にリーズから鳴物入りでマンチェスター・シティに加入したカルヴィン・フィリップスだが、リーズ時代のパフォーマンスはどこへ行ったのだろうか。シーズン序盤はコンディション不良や手術を伴う怪我があり、ベンチ外で過ごす日々が続いた。また、カタールW杯のイングランド代表メンバーに選出され、代表選出メンバーには大会後に給与期間が与えられていたが、フィリップスはまさかのオーバーウェイトでチームに復帰。この事態にジョゼップ・グアルディオラ監督からは苦言が呈され、さらに出場機会が減少することになった。

結果的にプレミアリーグでの出場は12試合のみで、スタメン出場においては2試合のみであり、それはすでにチームのプレミア優勝が決定となった試合であった。チームにはスペイン代表MFロドリという絶対的なアンカーが存在しているため、レギュラーポジションを奪うのは難しいチャレンジではあるが、今のコンディションとパフォーマンスでは期待に答えるのは難しいであろう。ポテンシャルは申し分ない選手であるため、来季の復活に期待したいところだ。

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MFユーリ・ティーレマンス(レスター)

かつて、元日本代表FW岡崎慎二が所属していた2015−16シーズンに奇跡のプレミアリーグ優勝を果たしたレスターが、今シーズンの18位という結果によってプレミアからの降格が決まってしまった。そのレスターで中心選手として出場していたのがベルギー代表ユーリ・ティーレマンスである。正直、ティーレマンスをこのワーストイレブンに選出すべきかどうかは悩んだが、レスターをチームの軸となる選手として、降格の悲劇から救うことが出来なかったことが選出理由の一つである。もう一人のレスターの主軸選手であるイングランド代表MFジェームズ・マディソンが10ゴール9アシストと躍動したのに対し、ポジションの違いはあるが、ティーレマンスが3ゴール2アシストと、数字の面では物足りない感はあるように思える。

実力は申し分なく、毎年のようにビッグクラブからの関心の報道がされるため、レスターからのステップアップが出来ず、残留することでのモチベーションの低下があるのかどうかは本人にしかわからない。だが、皮肉なことにレスターが2部に落ちることで、ティーレマンスは来季にステップアップ移籍をすることが確実だ。
実際に、本人もレスターからの退団を表明している。今季のパフォーマンスは讃えられるものではなかったが、実力者であることは確かなだけに、フリートランスファーで獲得できるティーレマンスの争奪戦は激化することだろう。

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MFジェシー・リンガード(ノッティンガム・フォレスト)

今夏にマンチェスター・ユナイテッドから昇格チームのノッティンガム・フォレストに完全移籍し、主軸選手としての活躍が期待されたジェシー・リンガードだが、結果はボロボロだった。シーズン開始当初はトップ下や左WGのスタメンとしてコンスタントに出場していたが、ゴールやアシストといったチームの勝利に直結する仕事は無かった。2023年1月1日のチェルシー戦から3試合をハムストリングの負傷で欠場すると、そこから先は全くと言っていいほど出場機会は無くなり、監督からの信頼は皆無になっていたといっても過言では無かった。最終的に、プレミア17試合出場で0ゴール0アシストと、ユナイテッドからフォレストの中心選手となるべくやって来た面影はどこかへ行ってしまった。

今年の1月には古巣であるユナイテッドへの所属時の不満を明かしたことも記事となっており、今シーズンのリンガードは散々な結果だった。このまま選手として落ちてしまうのか、再度輝きを取り戻すことが出来るのか。来シーズンが勝負の年となるだろう。

MFフィリペ・コウチーニョ(アストン・ヴィラ)

プレミアリーグを7位でフィニッシュし、来季のUEFAカンファレンスリーグ出場を決めたアストン・ヴィラにおいて、全盛期のパフォーマンスが失われ、期待した活躍が全く出来なかった選手が一名いる。元ブラジル代表、フィリペ・コウチーニョだ。スティーブン・ジェラード前監督時代にはコンスタントに出場していたが、ゴールもアシストも無く、低調なパフォーマンスが続いていた。ジェラードが電撃解任され、ウナイ・エメリが監督に就任すると、コウチーニョの出場機会はみるみるうちに減少していき、2023年2月18日のアーセナル戦に出場して以降の15試合では1度も出番を与えられなかった。

リバプール在籍時代には左からのカットインシュートや切れ味鋭いドリブル突破、相手DFとMFのライン間でボールを受けてからのターンで前を向くプレーなどで相手守備陣を切り裂いて、結果を残していたが、もうキレキレのプレーをする姿を見ることはできそうにない。
リバプール時代に同僚だったブラジル代表FWロベルト・フィルミーノがホーム最終戦後のアンフィールドで大喝采を受けながら退団セレモニーが開催されたが、その際の対戦相手がアストン・ビラだった。そして、コウチーニョはベンチ外。フィルミーノとコウチーニョのキャリアの明暗が浮き彫りとなった瞬間にもなった。

FW部門

FWアントニー・マテウス(マンチェスター・ユナイテッド)

プレミアリーグデビューとなった、2022年9月4日のアーセナル戦から10月9日のエバートン戦までの3試合で3試合連続ゴールをあげたブラジル代表アントニーはそのまま大活躍のシーズンを送ると思われたが、現実はそうはいかなかった。しばらくは得点から見放される日々を送り、ようやく4ゴール目をマークしたのは2023年4月16日のノッティンガム・フォレスト戦と3ゴール目から約半年が経っており、今シーズンは結果的にこの4ゴールのみで終了した。

低調なパフォーマンスとなってしまった原因はドリブルのバリエーションの少なさであろう。右WGを主戦場とする左利きのアントニーの十八番は、左足のみを使って内側にカットインしていくドリブルである。このカットインドリブルの質は一級品であるが、逆にいうとこの持ち技しか無いように思える。対峙する相手からすると、この左足のカットインのみを警戒しておけば良いので、予測がしやすくなってしまっている。内側に行くと見せかけての縦への仕掛けや、右足も使ったドリブルを習得しないと、来季も同じような結果が待っているように思ってしまう。

幸い、ユナイテッドはCL出場権を獲得したこともあり、アントニーにとってはモチベーションの材料になるはず。巨額な移籍金で加入しただけに、来季はチームを牽引するパフォーマンスを求められる正念場になるだろう。

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FWラヒーム・スターリング(チェルシー)

ククレジャと共に今シーズン大不振に陥ったチェルシーからワースト選手に選出されてしまったのはイングランド代表ラヒーム・スターリングだ。ノルウェー代表FWアーリング・ハーランドやアルゼンチン代表FWフリアン・アルバレスがマンチェスター・シティに移籍してきたため、出場機会を求めて移籍してきたチェルシーでも、シティ時代の活躍が期待されていた。しかしながら、その期待には答えられなかったと言える。

2021−22シーズンにはスターリングはプレミアリーグで13ゴール6アシストのパフォーマンスだったが、今シーズンは6ゴール3アシストと、ゴール・アシスト共に昨シーズンの約半分となった。また、シティ時代にはグアルディオラ監督からの指導によって目立っていなかった、守備時のポジショニングやプレスのかけ方、プレスバックのクオリティの低さが、チェルシーでは表面化しており、チームの穴として相手から狙われる存在ともなっていた。

もう若手ではないスターリングがここから復活できるかどうかは、スターリング自身のモチベーションや取り組み次第であろう。

FWリシャルリソン(トッテナム)

カタールW杯ではブラジル代表のセンターフォワードのスタメンとして4試合に出場し、3ゴールをあげたリシャルリソンだが、プレミアリーグでは散々な結果だった。2022年の夏にエバートンからトッテナムに移籍し、イングランド代表FWハリー・ケインと共に多くのゴールを期待されたが、今季が終わってみればたったの1ゴールのみと、ファンからの失望の声が聞こえる。トッテナムでは右WGでの起用が多いとは言え、27試合出場で1ゴールのみは、昨シーズンにエバートンであげた10ゴールという実績とそれに伴って寄せられていた期待、さらには獲得に6000万ポンドを費やされたことを考えるとあまりに少なすぎる。

今季はリシャルリソンと共に、韓国代表FWソン・フンミンも前半戦はプレーの調子が上がらずに苦戦していたが、ソンは結果的には2桁の10ゴールまで到達した。ケインは30ゴールをマークと流石の活躍だった。ケインとソンに次ぐ第3のストライカーとしての期待を背負いながら、大きく失望を与えたリシャルリソンが、トッテナムのヨーロッパのコンペティション逃しの元凶の一人であったと言わざるを得ないだろう。

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プレミアリーグ2022-23の“ワーストイレブン”のまとめ

今回の22-23シーズンにおけるプレミアリーグ、サプライズイレブンは以下のフォーメーションで選出させていただいた。

今回のワーストイレブンでは、今季夏に新たなチームに移籍し、期待されていたが、その期待に沿えなかった選手が多く選ばれた。移籍初年度というのは新たな環境への適応面において難しさがある一方、すぐにでも戦力として貢献してほしいという期待も大きくなってくる。その期待に対して、大きな失望を与えてしまった選手が今回のような、“ワーストイレブン”には選出されやすくなってしまう。

ただ、今回のコラムにてピックアップされてしまった選手はどの選手も実力者であることは言うまでもない。そのため、来シーズンには大きな活躍を見せてくれることも筆者は期待している。また、この期待に反してしまった際には、来年にまた“ワーストイレブン”に名を連ねることになるだろう。

プレミアリーグ22-23のワーストイレブン

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この記事を書いたライター

ユルゲン・クロップ監督率いる当時のドルトムントがきっかけでサッカー好きに。
試合をシステムの観点から分析するのを得意としている。
好きなサッカー選手は、チアゴ・アルカンタラ。
趣味はゴルフ・釣り・サウナ・野球観戦と多彩。

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