チェルシーの3バックシステム戦術とは?ノーミルク佐藤が解説「モダンなWB」

トゥヘル監督
【引用:Fabrizio Romano公式Twitter & Off The Ball編集部】

現在、トッテナムとチェルシーは、3バックシステムを採用しているビッグクラブの中で、最も注目度の高い存在と言えるだろう。チェルシーはトーマス・トゥヘル監督の体制で3バックシステムを採用すると、途中就任のシーズンにしてUEFAチャンピオンズリーグ優勝を達成。失点の多かったチームの守備を大幅に改善させたことに加え、攻撃面でも智将トゥヘル流のモダンな3バック戦術を取り入れている。サッカー専門YouTubeチャンネルでMCを務め、データ企業を経営する戦術分析家のノーミルク佐藤氏は、チェルシーの巧みな戦術と3バックシステムの特徴について解説している。

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トゥヘル監督がチェルシーで仕込んだモダンな3バック戦術

チェルシーは2021-22シーズン、リーグ戦序盤の10試合で8勝1分1敗で首位を走るスタートダッシュを切り、クラブW杯でも優勝を飾った。一方、過密日程の中で相次ぐ負傷離脱や新型コロナウイルスの感染者続出により、徐々にトーンダウン。それでもリーグ杯、FA杯では決勝まで駒を進め、リーグ戦も3位で終えてCL出場権を手にした。そんな中、ノーミルク佐藤氏はチェルシーのウイングバックに着目している。

ノーミルク佐藤

チェルシーはトゥヘルが就任してから、3バックというより5-2-3のようなシステムを取り入れている。なぜそのシステムをやり始めたのかというと、やはりペップ・シティの5レーン戦術に対抗するためなのではないかと思う。実際にトゥヘル体制になってからは守備が大幅に改善されている一方、攻撃陣の歯車がうまく噛み合わなくなったシーズンを過ごした。それでも、トゥヘルがモダンな3バック戦術で仕込んだウイングバックの働きが面白かったなと。言わば偽サイドバックのような立ち回りで、ボランチの位置に入り込んだりもしていた。そうすると、本来ボランチにいる選手が別のポジショニングができたり、逆サイドのウイングバックがウイングの立ち位置を取ったりと、対戦相手としては「どこを見たらいいの?」とマークに混乱や迷いが生じていた。

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チェルシーの3バック戦術は「ウイングバックが軸」

トゥヘル体制になり、ウイングバックが中盤の位置や相手ボックス内に走り込むなど、プレーエリアが大幅に拡がったことから、対戦相手からすればウイングバックの選手、またはウイングバックの立ち回りによりポジショニングを変える選手を捕まえることが難しいチームとなっている。その中で、ワールドクラスの才能を開花させたのがイングランド代表DFリース・ジェームズだ。

ノーミルク佐藤

ウイングバックの片方が中盤に入り込み、ボランチのどちらか1枚をピン留めさせ、前線を含めた残りの4枚で攻め込む。または逆サイドのウイングバックをアタッカー要員として攻撃に厚みを持たせる。そういったウイングバックが軸となる要素がトゥヘルの色として出ていたなと。なかでも、圧倒的な存在感を放っていたのがリース・ジェームズ。彼を起点に相手守備を打開するパターンが大幅に増えた。ウイングバックながら、昨季は5ゴール9アシスト。負傷離脱もあり、出場試合は22試合だったが、合計14ゴールを生み出しているわけだから、約2試合に1得点の演出。これは目覚ましい活躍と言える。

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チェルシーの3バック戦術で覚醒したリース・ジェームズ

リース・ジェームズは兼ねてから攻守において高い能力を備えた有望な選手ではあったものの、どこか“器用貧乏”な一面も。サイドバックとしての守備力、ウインガーとしての攻撃力を他の選手と比較された際、突き抜けられない要素が課題とも言えた。しかし、トゥヘル監督が導入する3バックシステムでは、彼の“器用貧乏”な一面を、最大の武器へと変換することが可能となった。

ノーミルク佐藤

リース・ジェームズは、サイドバックにしては守備強度に難点があり、ウイングにしては個の打開力に欠けるという評価の中で、今のチェルシーのスタイルの中でのウイングバックというのが、彼のベストポジション、彼にとっての最適解となっている。昔の時代だったら日の目を見なかったかもしれないが、1つのポジションで多岐にわたるマルチな能力を求められるようになったモダンサッカーは、彼の持ち味を存分に発揮できる時代と言えるだろう。もちろん元々リース・ジェームズは良い選手ではあったが、彼がワールドクラスの選手にまで飛躍したのは、トゥヘル・チェルシーがあってこそだと思う。

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チェルシーが苦悩した外的要因と内的要因

トゥヘル監督が織りなすモダンな3バック戦術は着実に浸透している一方、やや不完全燃焼なシーズンを過ごすことになったのは、ロシアのウクライナ侵攻によるロマン・アブラモヴィッチ会長の退任という外的要因、クラブ史上最高額の約150億円で獲得したベルギー代表FWロメウ・ルカクの不発という内的要因があった。勢いのある若手選手たちが大きな飛躍を遂げたシーズンでもあっただけに、新シーズンでは真価が問われることになりそうだ。

ノーミルク佐藤

チェルシーでよく目にしたプレーの1つを紹介させてもらうと、前線3枚で相手の最終ラインをピン留めしつつ、ボランチ2人で相手の中盤を引き込ませ、相手の最終ラインと中盤を意図的に分断させる。そのライン間に生じたスペースにウイングバックを走り込ませ、前線3枚+ウイングバック1枚で仕掛ける4対4の局面を生み出す。トゥヘルの目指すサッカーは順調に実を結び始めていた。それでも勝ち切れない試合が多かったのは、抱えていた問題の深刻さもある。外的要因としては、ロシアとウクライナの情勢による、オーナーの突然の退任。そして内的要因としては、巨額を投資したルカクの処遇や起用法の判断に時間を要したこと。それでも、マウントやリース・ジェームズといった若手の活躍は非常に好材料で、彼らのさらなる成長が新シーズンのチェルシーにとって試金石となるだろう。

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チェルシーの3バックシステム戦術のまとめ

【引用:チェルシー公式Twitter】

チェルシーはトゥヘル監督が就任して以降、3バックシステムを採用することで守備を大幅に改善。さらに、ウイングバックに中盤やアタッカーのタスクを与えることで、対戦相手にとって守備対応が難しいチームを作り上げた。さらに、モダンな3バック戦術を取り入れることで、リース・ジェームズの大ブレイクを促している。オーナー退任の外的要因や、エースの不振による内的要因で、思うようなシーズンを過ごせなかったチェルシーだが、新シーズンでは若手のさらなる成長と3バック戦術の洗練で優勝争いに参戦したいところだ。

当記事のインタビュイー

ノーミルク佐藤のプロフィール

株式会社Lifepicture代表取締役、YouTubeCH「ミルアカ」MC『ノーミルク佐藤』。

複数webメディアの運営や企業の経営改善、マーケティング、プロモーション、教育事業を行う傍ら、自社でサッカーのデータラボを立ち上げ、独自にデータの収集・分析・開発を行う。

ABEMA「ゼルつく」の専属データマンとしての出演、ABEMA「FIFAワールドカップ2022抽選会生中継〜最速予想&分析SP〜」などの出演、GOAL主催Jリーグ版NXGN2021選考委員等も務める。

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この記事を書いた人

「Off The Ball」編集長。
大手サッカー専門メディアに過去6年配属。
在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。
「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。
人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。
趣味はサウナ。

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