シントトロイデン、日本人選手の現在地 ノーミルク佐藤が総括

ベルギーのシントトロイデンは、日本の大手企業「DMMグループ」が経営権を取得して以降、数多くの日本人選手がプレーしてきた。日本代表DF冨安健洋は、シントトロイデンへの移籍で渡欧し、印象的な活躍を披露したことでボローニャへ。そして、今では名門アーセナルにステップアップした。同MF鎌田大地は、シントトロイデンへ期限付き移籍したことで飛躍を遂げ、帰還したフランクフルトで主力の座を勝ち取っている。日本人選手にとってシントトロイデンは海外挑戦の拠点、または再起のきっかけをもたらす重要なクラブに位置付いているが、現在所属している日本人選手について、サッカー専門YouTubeチャンネルでMCを務め、データ企業を経営する戦術分析家のノーミルク佐藤氏が総括している。

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空中戦勝利数でリーグ2位のチーム内得点王・原大智

現在、シントトロイデンの日本人選手は4人となっているが、2021-22シーズンは計7人が在籍していた。その中で、リーグ戦8ゴールでチーム内得点王になったのが、2021年夏にスペインのデポルティーボ・アラベスから期限付き移籍で加入していたFW原大智だ。

ノーミルク佐藤

2021-22シーズンのシントトロイデンで良かった選手と言えば、やはり原大智選手になる。ベルギーリーグ全体で、空中戦勝利数で2位の記録を叩き出している。FC東京時代は、長谷川健太監督に右ウイングで起用される傾向にあったが、クロアチアのNKイストラ1961に移籍してからは、CFとして意識を変えて取り組んできて、今回はアラベスから1シーズンローンでシントトロイデンに加入したわけだけど、日本人選手が複数人いるのは、彼にとって大きかったというのは見て取れた。そして、なぜ原選手が得点を重ねることできたのかと聞かれたら、隣にいた男の働きについて触れなければならない。林大地選手の存在は非常に大きかった。今のプレースタイルで考えるならば、レスター時代の岡崎慎司選手と非常に似通っている。

原大智&林大地コンビの礎となった鈴木優磨の存在

原大智と2トップを組むのは、同時期にシントトロイデンに完全移籍で加入した林大地だった。林大地が持ち前のハイプレスとハードワークで献身的に走り回る“動的”なタスクを担い、原大智はゴール前の勝負に専念する“静的”な仕事を務め、2人で計15ゴールを記録。チームを牽引する相性抜群のコンビとして輝きを放った。シントトロイデンで原大智と林大地のコンビがはまった背景には、昨季途中で鹿島アントラーズへと移籍したFW鈴木優磨の存在があるという。

ノーミルク佐藤

話は逸れるが、1年前までのシントトロイデンでは、現鹿島の鈴木優磨がゴールを量産していた。元々、最前線の選手が鈴木優磨選手しかいないという時期があって、途中から彼にボールが届かなくなってしまった。対戦相手も、鈴木優磨選手が得点源であることは把握しているので、その前のところの供給元を断絶させられていた。そのため、鈴木優磨選手はビルドアップやボールの出口役としてもリソースを割かなければならなくなり、中盤まで下りてくるタスクが増えた。実際、その時の経験と成長があったからこそ、鹿島では上田綺世選手をフィニッシャーとして活かすためのプレーができている。

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鈴木優磨の負荷に対するシントトロイデンの改善策

鈴木優磨は2020-21シーズンで17ゴールを決める大活躍により、シントトロイデンでエースとしての座を築いた。しかし、翌年から対策され、前線にボールが届かなくなってしまったことで、鈴木優磨は9番としてゴールを狙うだけでなく、偽9番のようなチャンスメイク役もこなす必要性が生じることに。チームとしての改善点が明確になったことで、最終的に現状の形へと行き着く道筋ができた。

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シントトロイデンは、鈴木優磨選手の負担を減らすための解決策を2人に見出した。1人は、中盤の(クリスティアン・)ブルース。ビルドアップ時のリンクマンの役割を託した。もう1人が、アタッカーのイロンベ・ムボヨ。ムボヨが潰れ役をこなすことで鈴木優磨がフィニッシャーとしての仕事をスムーズに行えるようになった。結果的に、シーズン途中で鈴木優磨選手は鹿島に、ムボヨはヘンクに移籍することになったが、鈴木優磨選手の役割を原選手が、ムボヨの役割を林選手が引き継ぐことになった。ブルースが繋ぎ、林選手が潰れて、原選手がゴールに迫るという、1つの形を確立することができた。

主力を担う橋岡大樹は「自然とボールが集まってくる選手」

そして、右ウイングバックでレギュラーの座を勝ち取っているDF橋岡大樹について、ノーミルク佐藤氏はピッチ内外で多大な影響力を持っていると称賛している。

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もっと評価されていいと思うのは、橋岡大樹選手。海外挑戦した日本人選手に関して、2〜3年経ったタイミングで負傷離脱が多くなる傾向にあるなと個人的に少し感じていたが、彼にはそれがない。浦和時代も、足が攣っても根性で走り切る姿を見てきたし、そういったメンタルがチームからの信頼に繋がっている。彼はリーダーを率先して担うことのできる選手。フィールドプレーヤーとしても3番目に出場時間が長い。彼の持ち味は、誰とでも仲良くなれるコミュニケーション能力。ピッチ外でも信頼関係を築くことで、ピッチ内でも自然と橋岡選手にボールが集まってくる選手になっている。23歳という年齢でチームを引っ張る存在になることができているのは素晴らしい。あとは、目に見える数字・スタッツを残せるようになれば、もう1つ上のランクにいけるのではないかと思っている。

途中加入の香川真司は「新シーズンが本当のスタートになる」

昨冬の移籍市場で加入したばかりのMF香川真司に関しては、チームに不足しているボール捌きの職人として、新シーズンから本領を発揮することに期待を寄せている。

ノーミルク佐藤

香川選手の獲得に関しても、やはりチームにリンクマンが必要という判断によるものかと。ブルースとともに、真ん中で守備陣と攻撃陣の繋ぎ役がもう一人いてくれたら、チームとしてはうまく回る。そこでやってきたのが、香川選手だった。香川選手には、2022-23シーズンで本領を発揮してもらうために、早めに獲得に踏み切ったというのはあるだろう。しばらく無所属の期間があった中でシントトロイデンに加入したので、コンディション調整にはどうしても時間がかかった。新シーズンが彼にとって本当のスタートになると期待している。

シントトロイデンに所属する日本人選手のまとめ

【引用:STVV公式Twitter】

シントトロイデンは2021-22シーズンでチーム内得点王となる活躍を披露した原大智が、保有元のアラベスにレンタルバックしたことで、得点源の穴埋めが急務となっている。原大智を完全移籍で再獲得する可能性もまだ残ってはいるものの、それが実現に至らなかった場合は、新たな補強や戦術の見直しが必要となる。林大地や橋岡大樹はもちろんのこと、香川真司の復調も重要な要素となってくるだろう。

当記事のインタビュイー

ノーミルク佐藤のプロフィール

株式会社Lifepicture代表取締役、YouTubeCH「ミルアカ」MC『ノーミルク佐藤』。

複数webメディアの運営や企業の経営改善、マーケティング、プロモーション、教育事業を行う傍ら、自社でサッカーのデータラボを立ち上げ、独自にデータの収集・分析・開発を行う。

ABEMA「ゼルつく」の専属データマンとしての出演、ABEMA「FIFAワールドカップ2022抽選会生中継〜最速予想&分析SP〜」などの出演、GOAL主催Jリーグ版NXGN2021選考委員等も務める。

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ジョータツ

「Off The Ball」編集長。 大手サッカー専門メディアに過去6年配属。 在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。 「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。 人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。 趣味はサウナ。