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新生PSGが日本遠征で見せた“変革” システム変更、メッシ起用法を解剖

21-22シーズンでは2年ぶりのリーグ優勝を果たしたものの、カップ戦とUEFA チャンピオンズリーグ(CL)ではベスト16で敗退してしまったパリ・サンジェルマン(PSG)。アルゼンチン代表FWリオネル・メッシやスペイン代表DFセルヒオ・ラモスというビッグネームの加入と明るい材料はあったものの、数百億を投資しているクラブとしては少し物足りない結果となってしまった。この状況を打破するために今オフにマウリシオ・ポチェッティーノ監督を解任し、クリストフ・ガルティエ監督を新たな指揮官として迎え入れた。さらにアドバイザーにはルイス・カンポス氏を迎え入れるなど、積極的に動いている。そんなPSGに関して、日本遠征を通して、22-23シーズンにおける見どころを本記事で紹介していきたい。

text by T-Oyama

PSGが川崎戦でテストした3バックシステム

見どころの1つ目はシステム変更である。昨シーズンのPSGは主に4-3-3や4-2-3-1といった4バックをメインとしたシステムを使っていた。しかしながら、先日行われたPSGと川崎フロンターレのフレンドリーマッチでは、メッシをトップ下に置いた3-5-2といった3バックシステムをテストした。これにより、昨年までサイドバック(SB)で主にプレーしていたモロッコ代表DFアクラフ・ハキミとポルトガル代表DFヌーノ・メンデスがウィングバック(WB)でプレーすることができ、彼らのスピードや攻撃力がより活かされる。実際に川崎戦ではハキミは右サイドで豊富な運動量を活かしたスプリントを見せており、攻撃時にはより高い位置にいたため、メッシの先制ゴールをアシストできた。またWBが高い位置をとることで守備がサイドに引き寄せられて中央のスペースが空き、トップ下のメッシがよりゴールに絡みやすくなるのではと思われる。昨シーズンは移籍1年目であることやシュートがポストに当たる不運も多く、6ゴールに終わってしまったメッシだが、このシステムになったことで、バルセロナ時代に見せていたような得点力やパフォーマンスを期待できるのではなかろうか。

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PSGに重要な要素をもたらすラモスの存在

さらに、このシステム最大のポイントはブラジル代表DFマルキーニョス、フランス代表DFプレスネル・キンペンベ、ラモスといった3人のセンターバックを同時起用できることだろう。そのことにより、守備時に最終ラインが5枚になるのでより強固な守備網となり、サイドの選手が裏を取られてもカバーリングしやすくなる。またラモスに関しては、川崎戦でも裏を取られるシーンがいくつか見られ、全盛期と比べると衰えがあるかもしれない。しかし、PSGは近年CLでリードしながらも1度失点してしまうと、集中力の欠いたプレーからの連続失点や、やるせないプレーが多々見られる。このようなことを繰り返さないためにもレアル・マドリードのキャプテンとして何度もCLを制覇したラモスの“勝利のメンタリティ”は必要になるはずだ。ただ、1年間ずっとラモスを出し続けるのは、コンディションを考えると厳しいため、さらなるCBの補強はあってもいいかもしれない。

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PSGの司令塔に指名された新星ヴィティーニャ

2つ目の見どころは新加入組である。今オフにいくつかの出入りのあったPSGだが、まず初めに紹介するのはヴィティーニャだ。ヴィティーニャはポルトから加入したボランチの選手で正確なパスを出せることや、中盤でボールを運ぶのに秀でている22歳と若い選手である。川崎とのフレンドリーマッチでは、ボランチとして先発出場し、状況に応じたポジショニングでボールを受けて運び、パス能力の高さを感じることができた。彼がさらにチームにどのようにフィットしていくかも鍵となる。

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期待値の高いPSGのヤングスターたち

その他にも、昨季リーグ・アンで10得点4アシストを記録したFWウーゴ・エキティケをスタッド・ランスからレンタル移籍で獲得することが決まっている。彼は190cmと高身長なだけでなく、足元の技術やスピードに優れているプレーヤーで、まだ20歳と非常に若く、今後どう化けていくのかが楽しみである。また、川崎戦で1ゴールを挙げたFWアルノー・カリムエンドをはじめとするPSGの下部組織出身の若手プレーヤーがポジションを奪い取れるかどうかや途中出場で結果を残せるのかといった点も注目だ。新加入なのは選手だけでなく、ガルティエ監督もそうである。彼はこれまでサンテティエンヌやリール、ニースとフランスのチームを指揮してきており、4-4-2システムを基本フォーメーションとして構えた堅守速攻で結果を出してきた。そんな彼が川崎戦では3バックシステムを導入する、思い切ったテストに乗り出している。今まで率いていたチームとは異質の、世界最高のタレント軍団であるPSGでどう指揮していくのかも見ものだ。

PSGに変革をもたらす敏腕SDの就任

3つ目の見どころはルイス・カンポス氏のアドバイザー就任である。2019年からスポーツ・ディレクターを務めたレオナルド氏が解任され、代わりに就任したのがルイス・カンポス氏である。彼はこれまでモナコやリールで新戦力の獲得に携わってきており、モナコでは当時、ポルトガル代表ベルナルド・シウバらを獲得した。このようにダイヤモンドの原石を適材適所で獲得することができる彼が、今後PSGにどんな選手を加入させるかも注目すべきポイントになるだろう。まだ夏の移籍市場は閉まっていないので、ジャパンツアーが終わる頃にまた新たな選手の獲得が発表されるといったこともあるかもしれない。

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PSGが日本遠征で見せた“変革”のまとめ

【引用:PSG公式Twitter】

今回のジャパンツアーではPSGというチームよりも、メッシやネイマール、ムバッペといった個人に関心がある人が多いかもしれない。しかしながら、日本遠征でのテストを見る限り、22-23シーズンのPSGは監督もシステムも変わり、新加入選手も例年より若い選手が多く、実は見どころがたくさんあり、非常に今後が楽しみなチームなのは間違いない。浦和レッズ戦とガンバ大阪戦を控えているが、今回のジャパンツアー、そしてこの記事をきっかけにPSGの魅力を感じていただけると幸いだ。

T-Oyama

6歳からJリーグ、高校生から海外サッカーに興味を抱くようになり、試合を観戦するように。 好きな選手はアンヘル・ディマリア。 海外のサッカーを見始めるきっかけとなった選手でもあり、このことを人に話すと100%驚かれる。