トッテナムの3バックシステム戦術とは?ノーミルク佐藤が解説「古典を徹底」

現在、トッテナムとチェルシーは、3バックシステムを採用しているビッグクラブの中で、最も注目度の高い存在と言えるだろう。トッテナムはアントニオ・コンテ監督の就任後に3バックシステムを取り入れると、2022年に入ってから破竹の勢いで勝ち点を積み上げ、見事トップ4に返り咲いた。新シーズンは積極的な大型補強を敢行しており、クラブ史上初のプレミア制覇にも期待が寄せられている。サッカー専門YouTubeチャンネルでMCを務め、データ企業を経営する戦術分析家のノーミルク佐藤氏は、トッテナムが迎えた転換期と3バックシステムの特徴について解説している。

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コンテ監督の3バック戦術で再建されたトッテナム

トッテナムは2021-22シーズン、苦しい序盤戦で下位に沈んでいたが、名将コンテ監督が途中就任して以降、3バックシステムでチームに変革をもたらし、終盤で4位に滑り込む快挙を達成した。マンチェスター・シティとリバプールが圧倒的な強さを誇示するシーズンとなったが、終盤戦でシティには勝利し、リバプールには引き分け、二強の優勝争いに波乱の展開をもたらす存在となった。

ノーミルク佐藤

新シーズンにおいて、最も充実度の高いクラブの1つに、トッテナムが挙げられるだろう。シーズン途中で政権が変わり、チームが固まるのに時間は要したが、2022年に入ってからは、勝率においてシティ、リバプールの二強とそこまで差がない。実際、そのシティとリバプールからも勝ち点を奪っているし、3月の中旬から約2ヶ月半負けなし。一方で、シティに勝利したにも関わらず、次節にバーンリーに負けるというムラが、まだトッテナムが未完成であるという裏付けにもなった。

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トッテナムの3バック戦術はチェルシーと異なり「古典的」

王者のシティに3-2で勝利した翌週、降格したバーンリーに0-1で敗戦。ポゼッションを高め、前屈みになるシティに対しては、速攻カウンターによってスペースを突くことができた一方、自陣ゴール前に守備ブロックを敷いたバーンリーの牙城を崩すことができず、無得点に終わっていた。トッテナムの強みと弱みが顕著に映し出された2試合となったが、そこにチームの課題を解決する選手が現れたという。

ノーミルク佐藤

チェルシーの3バックシステムに対し、トッテナムの3バックシステムは緻密な連携があるわけではない。チェルシーのように両ウイングバックが中盤に入り込むことはないが、トッテナムの両ウイングバックは攻撃時にウイング化し、守備時にサイドバック化する、いわゆる、古典的な形を徹底した3バックシステムと言える。それは、トッテナムが前線3枚で相手守備陣を崩せるからこそ。これまではハリー・ケインとソン・フンミンの2人だけでゴールを生み出していたが、上位に食い込むには限界があった。2人さえ抑えておけば、というのは正直あったからだ。だからこそ、チームにやってきたクルゼフスキの存在が非常に大きかった。

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トッテナムの課題を解決したクルゼフスキの存在

トッテナムの3バックシステムは守備強度が高まった分、勝ち切るには前線の得点力が鍵を握る。その中で起爆剤となったのがスウェーデン代表MFデヤン・クルゼフスキだった。冬の移籍市場で加入したため、先発出場は14試合のみで、出場時間は他の選手の半分以下という状況で残した数字が5ゴール8アシスト。依存度が高く、対策も施されていたハリー・ケインとソン・フンミンの負荷を減らすキーマンを見事に買って出た。

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トッテナムを普段から見続けてきた立場から言うと、これほどまでに前線が全員はまったなと感じたのは、ケイン・ソン・エリクセンの並び以来かな。エリクセン同様、クルゼフスキには得点やアシストのような数字上の結果も、数字でない部分の貢献も期待できる。ユベントスにいた頃からもちろん良い選手ではあったが、ユベントスに完璧に適合していたかというと、そこまでではなかった。トッテナムは前線の役割分担が明確で、中央エリアはハリー・ケイン、左エリアはソン・フンミンが仕事をするゾーンスペースとしていて、クルゼフスキは右エリアを担っている形だが、結果的に彼は自分の領土を与えられている方が能力を発揮しやすい選手だったということなんじゃないかな。最終ラインと中盤の選手はボールを持ったら、必ず前線の3人がどこにいるのか確認をした上で次のプレーを選んでいるので、そこでの自己主張がちゃんとできているのだと思う。

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トッテナムの戦術で中核を担う“狩人”ホイビュア

また、現在のトッテナムにおいて不可欠な存在となっているのが、ボランチのデンマーク代表MFピエール=エミール・ホイビュアだ。チームの守備強度を向上させている要が“狩人”ホイビュアであり、3バックシステムを重宝するコンテ監督が目指すサッカーを体現しているというデータをノーミルク佐藤氏が紹介している。

ノーミルク佐藤

中盤でキーマンとなっているのが、ホイビュア。プレミアの面白いデータで言うと、まず対戦相手に枠内シュートを打たれたのが最も少ないクラブがトッテナム。シュートはそこそこ打たれているが、枠内シュートは打たれていない。そして、ディフェンシブサードでのプレス成功数。ビッグ6となると、そもそも攻め込まれる時間が少ないので、シティもリバプールもチェルシーもアーセナルもユナイテッドも、他のクラブに比べると、圧倒的に少ない5チームになる。しかし、トッテナムはプレス成功数でトップ3にランクインしている。これを個人の選手ベースまで落とし込むと、ホイビュアが上位に名を連ねている。前線の3人にボールをつけるため、他のメンバーで寄せて、ホイビュアでボールを奪うというスイッチ役になっている流れが、非常にうまくいっている。

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トッテナムの戦術に類似する“クラシカルなレアル”

シティとリバプールは“スーパーハイライン”の戦術に取り組んでおり、現時点で最先端のモダンサッカーと言える。一方、2021-22シーズンに三冠を達成したレアル・マドリードは、基礎に則り、基礎を極めたクラシカルなサッカーを一貫しているが、最先端のシティとリバプールを押し退けて欧州制覇を成し遂げた。そのレアルとシステムは違えど、トッテナムにも似通った強さが備わっていると見解を述べている。

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昨季のCLで言うと、結局優勝候補だったシティとリバプールは、どちらもレアルに敗れた。シティとリバプールは、2022年現在における最新のサッカーを集約しているようなチームだったが、それでもレアルには勝てなかった。逆にレアルは、モダンなサッカーを取り入れているかと言われたら、そうではない。クラシカルな戦術を一貫しているのがレアルの歴史だが、それでシティとリバプールを撃破したという事実がある。そして、それに近いサッカーをしているのが、トッテナムになる。シティとリバプールがトッテナム相手に勝ち点を取りこぼしたことと、CLでレアルで敗れたことは、決して偶然ではなく、伏線だったと言える。クラシカルなサッカーを極めるというのが、最新のモダンサッカーを打ち砕くトレンドにもなりえる。

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戦力充実のトッテナムは「優勝争いに絡む可能性がある」

トッテナムはUEFAチャンピオンズリーグ出場権を手にしたこともあり、今夏の移籍市場でクロアチア代表MFイヴァン・ペリシッチ、ブラジル代表FWリシャルリソンら大型補強を敢行。かつてないほど戦力の整ったスカッドとなっている。悲願であるプレミア初制覇にいよいよ現実味が帯びている。

ノーミルク佐藤

左ウイングバックにペリシッチ、前線ならどこでもプレーできるリシャルリソンの獲得もあって、攻撃面の厚みはクラブ史上最高レベルとも言える状態。これまでは上位チームに対して勝ち点を奪うことを得意としていた一方、下位チームの牙城を崩すのに苦労する節があったが、今のトッテナムであれば、勝ち点が大幅に上積みされ、本当の意味でプレミアの優勝争いに絡む可能性があると思っている。そして、CLにも参戦できるわけで、過密日程の中、いかなるパターンの中でも対応できるチームになったと言える。新シーズンのトッテナムは、世界トップクラスの3バックチームとしてサッカー界を席巻する可能性は大いにある。

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トッテナムの3バックシステム戦術のまとめ

【引用:トッテナム公式Twitter】

トッテナムはコンテ監督が就任して以降、3バックにシステム変更を施すと、2022年に入ってから怒涛の快進撃を見せ、大逆転でトップ4入りを果たした。夏の移籍市場では積極的な大型補強にも成功している。ノーミルク佐藤氏はトッテナムの3バックシステムに関して、各ポジションの選手が与えられたタスクを全うするクラシカルなサッカーであり、前線の得点力が中盤の守備強度が要となるが、クルゼフスキの加入とホイビュアの活躍により、コンテ監督の求めるレベルにまで到達したと言及。新シーズンはリーグとCLを揺るがす台風の目になる可能性が充分にある中、磨きのかかったトッテナムの3バックシステムに注目だ。

当記事のインタビュイー

ノーミルク佐藤のプロフィール

株式会社Lifepicture代表取締役、YouTubeCH「ミルアカ」MC『ノーミルク佐藤』。

複数webメディアの運営や企業の経営改善、マーケティング、プロモーション、教育事業を行う傍ら、自社でサッカーのデータラボを立ち上げ、独自にデータの収集・分析・開発を行う。

ABEMA「ゼルつく」の専属データマンとしての出演、ABEMA「FIFAワールドカップ2022抽選会生中継〜最速予想&分析SP〜」などの出演、GOAL主催Jリーグ版NXGN2021選考委員等も務める。

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ジョータツ

「Off The Ball」編集長。 大手サッカー専門メディアに過去6年配属。 在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。 「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。 人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。 趣味はサウナ。