【スペイン代表】ロドリのCB起用は「クレイジーな覚悟」 城福浩が監督目線で敬服

スペイン代表が、カタールW杯で予想外の戦い方を見せている。ルイス・エンリケ監督はこれまで、メンバーを固定しないローテーション起用を取り入れていたが、本大会を迎えた途端に2試合連続で固定メンバーをピッチに送り出し、さらに、本職がアンカーのMFロドリをW杯という大舞台で初めてのセンターバック(CB)起用に踏み切った。東京ヴェルディで指揮官を務める城福浩氏は、エンリケ監督の大胆不敵な采配について、監督目線で見解を述べている。

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ロドリのCB起用は「エンリケ監督の覚悟」

所属するマンチェスター・シティでもアンカーとして不動の地位を築いているロドリは、代表でもこれまでアンカーを務める機会が多かったが、初戦のコスタリカ戦、第2戦のドイツ戦では、CBの一角として起用されている。

城福 浩

ドイツ戦を見ていても、ロドリは相当前がかりになっている。そこで潰せればいいが、ラポルテやサイドバックがカバーしてなんとかギリギリ凌いでいる状況。ロドリをCBで起用するハイラインを、モダンと言うべきか、博打と言うべきか、そこは紙一重なところで、サネのスルーパスにムシアラが抜け出してGKと1対1になったシーンのラインの上げ方は、やはりCBにしては相当リスキーだった。今後も、意外とあっさり失点してしまうケースはどうしても出てくるだろう。ただ、エンリケ監督はそれを承知の上で、覚悟を決めているようだ。

ロドリCB起用の狙いは「中盤のバルセロナ化」

ロドリはCBとしての資質こそ備えているものの、それでもほとんど経験のないCBのポジションに配置する意図として、中盤のバルセロナ化とロドリのビルドアップ能力にあるとしている。

城福 浩

エンリケ監督は、超攻撃型のチームを作ろうとしている。その最適解が、中盤をバルセロナ勢で形成した上で、ビルドアップに長けたロドリをCBとして起用するフレームワークなのだと思う。これを「リスクが高すぎる」と評論するのは誰にでもできる。なぜなら、それは常識的で、正しい考え方だから。しかし…「攻撃こそが最大の防御」を真正面からやり切るクレイジーな覚悟に、私自身はシンパシーを感じる。

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エンリケ監督の決断は「常人では勇気を持てない」

エンリケ監督はCBにDFパウ・トーレスやDFエリック・ガルシアといったワールドクラスの選手を擁している中で、本職でないロドリをCBに起用しているわけだが、城福浩氏はその“常軌を逸した”決断を、監督視点で見解を述べた。

城福 浩

常識を覆さなければ、新たなフットボールの扉は開けられないということなのだろう。そうでないと、いくらペドリとガビが可能性に溢れていると言っても、本職のCBをベンチに追いやってあのメンバーを組むのは簡単ではない。常人では、その勇気を持つのは難しい。現場をやっていると、どうしても結果が出なかった時の批判や、マネジメントの難しさに怖さを感じるものだから。

唯一異なる戦い方で臨む試合が「おそらく日本戦」

ロドリのライン設定が非常に高いこともあり、フランス代表FWキリアン・ムバッペやブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールといった圧倒的なスピードを誇るアタッカーを相手にした場合、現状の戦い方であれば失点を重ねる可能性は大きくなりそうだが、それでも掲げたコンセプトを最後まで貫くのではないかと予想している。

城福 浩

前述の通り、ロドリをアンカーで起用するというのが最も常識的な発想。しかし、そうなるとブスケツは先発から外すことになってしまう。エンリケ監督は、決勝トーナメントでフランスやブラジルと対戦することになっても、ブスケツのアンカー起用とロドリのCB起用でやり切るつもりなのかもしれない。唯一、その戦い方をせずに別のメンバーを送り込む試合が、おそらく日本戦になる。

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W杯前のローテーションは「具現化するメンバーの見極め」

城福浩氏は当初、これまでスペインは本大会でローテーションを取り入れる戦い方を磨いてきたと想定していたが、エンリケ監督は最後の最後まで自身のプランに最善な選手を見極めるためのローテーションだった可能性を指摘している。

城福 浩

W杯予選やUEFAネーションズリーグであれだけメンバーを固定せずに戦ってきたエンリケ監督が、W杯本番ではほぼ固定メンバーで臨んでいるのは非常に面白い。てっきり本大会でもローテーションを取り入れるために、そのような采配を振るってきたのかと思っていたが、自身が本当にやりたいサッカーを具現化できるメンバーを最後まで見極めていたと言うことだったのかもしれない。

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スペイン代表のロドリCB起用のまとめ

スペインは今大会でも優勝候補の一角として期待を寄せられているが、ルイス・エンリケ監督の目標がそれだけとは限らない。

城福 浩

近年は、どうしてもCLやプレミアリーグがサッカーの最先端となっている中で、エンリケ監督は、W杯優勝の目標とはまた別に、代表チームからトレンドを発信する信念を抱いているように見えるし、私はそれを非常に好意的に捉えている。

W杯は昔とは異なり、サッカー界の最先端モデルといった立場ではなくなりつつある実情があるが、エンリケ監督は、スペイン代表がW杯で再び世界にインパクトを与え、サッカー界における最先端のトピックスとなる野心を密かに抱いているのかもしれない。

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当記事のインタビュイー

城福浩のプロフィール

U-17日本代表 監督…AFC U-17選手権優勝

FC東京 監督…ナビスコ杯優勝

ヴァンフォーレ甲府 監督…J2優勝

サンフレッチェ広島 監督…J1リーグ2位

東京ヴェルディ 監督…2022年〜現在

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ジョータツ

「Off The Ball」編集長。 大手サッカー専門メディアに過去6年配属。 在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。 「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。 人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。 趣味はサウナ。

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