レアル・マドリードの“右ウイング問題”はどうなる?小倉勉が見解「確実に動く」

レアル・マドリードは2021-22シーズン、2位バルセロナに勝ち点13差をつける独走体勢でリーガ・エスパニョーラ制覇を達成し、スーペルコパ・デ・エスパーニャでも優勝を果たした。UEFAチャンピオンズリーグも決勝に進出し、三冠まで王手をかけている。カルロ・アンチェロッティ監督の元、“白い巨人”は完全復活を遂げている中、ロンドン五輪のヘッドコーチを務め、昨季まで横浜F・マリノスのスポーツディレクターを担った小倉勉氏は、レアルの右ウイングの起用法について、見解を述べている。

https://www.off-the-ball.jp/supervisor/

レアルの“バルベルデ右ウイング起用”が大当たり

レアルは4-3-3システムを採用しているが、最前線はフランス代表FWカリム・ベンゼマ、左ウイングではブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールが確固たる地位を築いている一方、右ウイングはシーズン中盤まではフレキシブルに選手を起用していた。そんな中で、CL準々決勝のチェルシー戦を機に、守備的MFであるウルグアイ代表MFフェデリコ・バルベルデのコンバートに踏み切った。その起用法が見事に当たり、ソリッドさが増したチームはCL決勝まで駒を進めた。

小倉 勉

バルベルデの右ウイング起用は、守備の強度も上がることに加え、自分でボールを持ち運べる推進力もあるので、効果的な策となっている。ベンゼマ、ヴィニシウスと組ませることで、守備面のバランスを保つことができている。また、中盤のサポートに回る運動量も備えているので、クロースやモドリッチらベテランの主力選手の疲労軽減にも繋がる。交代策として、試合中にバルベルデを主戦場のインサイドハーフにコンバートさせることもできる。彼が右ウイングで出場することで、あらゆるパターンに対応することが可能となる。

アンチェロッティ監督が可視化したレアルの序列

バルベルデの右ウイング起用により、ビハインドで得点が必要な局面では、ブラジル代表FWロドリゴやスペイン代表MFマルコ・アセンシオを投入し、バルベルデを中盤に落とす布陣にすることが可能に。リードしている局面では、バルベルデをそのままに、フランス代表MFエドゥアルド・カマヴィンガを投入して守備の強度を上げるなど、試合の展開に柔軟に対応するパターンを確立することもできた。その一方で、アンチェロッティ監督の信頼が可視化されていると小倉勉氏は言及している。

https://www.off-the-ball.jp/realmadrid_ogura/
小倉 勉

アンチェロッティはマネジメントが非常に上手い監督だが、選手への信頼度は起用法ではっきり見て取れる部分がある。私はリーガの試合をほぼほぼ観ているが、前線で比較すると、ベイル・アザール・ヨビッチへの信頼度はほぼないように見える。なので、起用する機会も少ない。ロドリゴ・アセンシオ・バルベルデには信頼があるので、試合や状況によって使い分けている。前がかりに仕掛ける時はロドリゴを出すし、右サイドで左利きを使いたい時はアセンシオを抜擢する。その中でバルベルデは、推進力と、どこのポジションでもプレーができるユーティリティー性で右ウイングの切り札となっている。カマヴィンガが中盤の戦力としてカウントできるようになったことで、バルベルデを1つ前で起用できる余裕が生まれたのも大きい。

レアルは最適案を見出すも「右ウイングの補強は必要」

前線ではベンゼマがハイプレスに走るところを、バルベルデが縦横無尽に走り回って補填。中盤でクロースやモドリッチが最終ラインまで戻らないといけないところを、バルベルデが代わりにプレスバックしたりと、レアルで違いを生み出す“ベテランのキーマンたち”の負荷を減らす泥臭い働きもバルベルデが厭わないことで、チームのバランスが最適化されている。しかし、それでも今夏の移籍市場では、前線の即戦力の補強は行うだろうと予想している。

小倉 勉

例えば欧州の舞台では、マンチェスター・シティやチェルシーといったインテンシティーと攻撃力の高いビッグクラブが相手とであれば、バルベルデの守備の強度が重要になっていた。だが、それを踏まえても、右ウイングの選手の補強には確実に動くでしょうね。両サイドバックのバックアッパーの補強にも動くでしょうけど、違いを生み出せるFWも獲得しにいくだろう。レアルはこれまでもフロント3で点を取り切るようなスタイルを示してきたから、破壊力のあるサイドのプレーヤーを獲得する計画のプライオリティーは高いはず。

ムバッペを逃したレアルの次なるプラン

獲得が決定的と報じられていたフランス代表FWキリアン・ムバッペは急転直下でPSGと新契約を結んだ。1年以上にわたり進めてきたムバッペ獲得計画が土壇場で白紙となったことはレアルにとっても想定外の事態である一方、次なる最有力ターゲットに挙がっているのはASモナコのフランス代表MFオーレリアン・チュアメニだ。現在、世界で最も有望な中盤選手の1人と評価されているが、世代交代を含め、現在の戦術をさらに磨き上げて来季に臨む可能性にも触れている。

https://www.off-the-ball.jp/mbappe_psg_contract/
小倉 勉

ムバッペ獲得が破談に終わったのはレアルにとっても、固めていたプランも崩れて頭が痛いのは確かだろう。だが、それでも現状のスカッドでリーグ王者にも輝き、欧州王者にもあと一歩のところまで迫っている。それであれば、大きな変化は施さず、クロースとモドリッチの世代交代を見据えて次世代のスター選手を確保しておき、右ウイングは引き続きバルベルデの起用とロドリゴの成長に力を入れるということも考えているかもしれない。それに加えて前線のアタッカーを1人補強すれば、チームは申し分ない完成度になるだろう。

レアルの右ウイング問題のまとめ

【引用:レアル公式Twitter】

今季のレアルはリーガ・エスパニョーラ、スーペルコパ・デ・エスパーニャで優勝を収め、CL制覇にも王手をかけている。完全復活を遂げた“白い巨人”だが、終盤はバルベルデがコンバートされていた右ウイングのポジションに関して、即戦力を獲得すると小倉勉氏は予想。長期間にわたってアプローチしていたムバッペの獲得が破談に終わったものの、チュアメニの獲得に迫っていると報じられており、加入が実現すれば、“バルベルデの右ウイング起用”は引き続き継続される可能性がある。レアルが実際どの選手の獲得に動くのか、それによってレアルの来季の戦い方が見えてくることになるだろう。

当記事のインタビュイー

小倉勉のプロフィール

U-17日本代表 ヘッドコーチ… AFC U-17選手権優勝

日本代表 コーチ… 南アフリカW杯ベスト16

U-23日本代表 ヘッドコーチ…ロンドン五輪ベスト4

大宮アルディージャ 監督…J1残留

ヴァンフォーレ甲府 ヘッドコーチ…J2優勝

横浜F・マリノス SD…2017年〜2022年

東京ヴェルディ ヘッドコーチ…2022年〜現在

詳しいプロフィールはこちら

ジョータツ

「Off The Ball」編集長。 大手サッカー専門メディアに過去6年配属。 在籍時は、高校サッカー・J1リーグを主に担当。 「DAZN」企画でドイツ・スペインへの長期出張で現地取材を経験。 人生の転機は、フェルナンド・トーレスの引退会見で直接交わした質疑応答。 趣味はサウナ。