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18歳ルーキー鎌田大地の衝撃 飛躍を確信した取材背景

text by Jofuku Tatsuya

筆者が初めて鎌田大地を取材したのは、2015年4月に行われたナビスコ杯(現ルヴァン杯)のFC東京戦だった。サガン鳥栖のユニフォームを着た18歳のルーキーはこの日、記念すべきプロデビュー後の初スタメンを飾っていた。試合は0-2の敗戦となったが、当時まだ無名だった鎌田の圧巻のパフォーマンスに面食らったのを、今でも鮮明に覚えている。

トップ下を主戦場としながらもボランチで起用された鎌田は、不慣れなポジションにも関わらず、状況を打開する縦パスを何本も供給し、相手守備陣3人に囲まれながらも、優雅にボールキープしながらルックアップしてピッチ全域の状況を確認する姿は、まるで30代のベテラン選手のような風格すら漂わせていた。

驚かされたのはピッチ内だけではない。試合終了後のミックスゾーンでは、印象的なプレーを見せた鎌田が、何十人もの記者に囲まれることになった。おそらく高校を卒業したばかりの鎌田にとって、ミックスゾーンの主役となるようなスポットライトの浴び方は、初めての体験だったはずだ。しかし、鎌田は表情を一切変えることなく、終始落ち着いた質疑応答を見せていた。その一方で、淡々とした語り口とは裏腹に、彼の言葉は野心に満ち溢れていた。

「開幕の時から、『なんで俺を使わないの?』と思っていた。だから、監督とも1時間話し合うこともあった」

https://www.off-the-ball.jp/frankfurt_kamadadaichi/

18歳でプロデビューしたばかりのルーキーが、開幕から自分を起用するべきと心から思っているのが伝わってきた。決してビッグマウスを振る舞ったのではなく、自分の思っていることを素直に答えていた様子だった。「これは大物になる」と、その時に直感した。そして2年後、彼はドイツ1部フランクフルトへと活躍の場を移した。

2019年に筆者はドイツに出張する機会があり、UEFAヨーロッパリーグ(EL)のフランクフルト対アーセナルを現地観戦した。

試合はアーセナルに実力を見せつけられる0-3の完敗となったが、胸踊らされたのは、超満員となった本拠地コメルツバンク・アリーナの雰囲気だった。スタメンを発表する際、「ダイチ!」と名前が呼ばれると、サポーターは地鳴りのような声援で「カマダ!」と場内の熱を高めていた。

当時の取材から4年後、彼はドイツのクラブでファンの心を掴み、世界的名門のアーセナルを相手に先発出場を飾ったのだ。そして、アーセナルの守備陣に囲まれた鎌田だが、あの頃見せたような、落ち着きあるボールキープをしながら周りの状況を確認する姿が、そこにあった。

2022年、そのELでフランクフルトは頂点に立ち、鎌田はトロフィーを掲げた。だが、これが彼にとってのキャリアハイの瞬間だとは思えない。我々が見たのは、鎌田がこれから更なる偉業を達成していくための、最初の一歩なのだ。

text by Jofuku Tatsuya

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